Project Story

Project 列車走行位置アプリ
開発プロジェクト

阪急阪神東宝グループに属するシステムインテグレーターとして、阪急電鉄、阪神電気鉄道など、グループの鉄道会社の列車運行関連システムや駅設備・業務に関連するシステムを長年にわたって手がけてきたアイテック阪急阪神。その高度なIT技術と独自のソリューションノウハウは現在、グループ外の鉄道会社からも高く評価され、様々なニーズに応えるシステムを開発している。
こうした鉄道分野のシステム開発を行っているのが、交通事業本部だ。そしてその一翼を担うのが本プロジェクトチームである。
これから紹介するのは、列車の位置を検知し、スマートフォンで一般ユーザーに知らせる「列車走行位置アプリ」を開発したメンバーの挑戦と成長のストーリーである。
彼らは、開発プロジェクトの中で、どのような課題に直面し、いかにして乗り越えてきたのか、そのリアルに迫る・・・。

Project Member

  • 交通事業本部
    交通ソリューション部
    システム2課担当部長/システムエンジニア

    糸谷 憲治Kenji Itotani 1994年入社
  • 交通事業本部
    交通ソリューション部
    システム1課システムエンジニア

    坂部 達哉Tatsuya Sakabe 2011年入社
  • 交通事業本部
    交通ソリューション部
    システム2課システムエンジニア

    辻 智彦Tomohiko Tsuji 2010年入社
  • 交通事業本部
    交通ソリューション部
    システム1課システムエンジニア

    北村 華穂Kaho Kitamura 2019年入社
Interview1

プロジェクトスタート!
鉄道業界と乗客に貢献する
新しいシステムに挑むメンバーたち

2000年代に入り、日本でも気候変動による局地的豪雨や豪雪が多発し、さらに各地で大規模な地震などが発生。鉄道各社では、自然災害によって生じる輸送障害への対策や被害を軽減するため計画運休を実施するなど、対応策に追われた。これら災害発生時に混雑の回避やスムーズな鉄道利用を促す、リアルタイムな列車位置の情報提供が急務と考えられた。
また一方で、交通事業者、特に大勢の乗客が利用する鉄道事業者は、鉄道の運行状況をいかにして利用者に提示し、より利便性を高めてもらえるかという常なる課題があった。

そんな中で、とある鉄道事業者が2014年頃からスマートフォンで鉄道の運行状況を確認できるアプリを発表し、年々情報を確認できるエリアを拡大するなど、バージョンアップを続けていた。

こうした動きを敏感に察知した私鉄各社から、2015年、アイテック阪急阪神に「独自のシステムを開発してほしい」とのニーズが寄せられる。そして、プロジェクトは立ち上がった・・・。

プロジェクトのマネジメントを担う立場として選ばれたのは、2012年から鉄道運行管理の周辺システム開発のリーダーを務め、あらゆる鉄道に関するシステムの知識を持つエキスパート。続いてプロジェクトマネージャーによって、ベテラン、若手を含めたメンバーが集められた。

スタートにあたってスマートフォンのアプリ機能全体を開発する部隊のリーダーは「最新かつこれからのトレンドとなる開発案件で力を発揮できるチャンスを得て心が震えました。絶対に先行するアプリに負けない良いモノをつくりたい」と。
一方、列車の位置情報を集め、アプリへ送信するための装置検討・開発を託された部隊のリーダーは、「情報提供のミスは絶対にできない。お客様である鉄道会社の信頼のためにも、ユーザーの安心のためにも正確に情報を提供するアプリをつくらねば」と、それぞれ秘めた思いを胸に大きな一歩を踏み出した。

Interview2

お客様のニーズに真摯に向き合い、
確実に実現するための方法を
模索し続ける日々

「責任感があり、これまで色んなことにチャレンジしてきたこのメンバーなら、今回取り組む新しい技術や今まで当社にノウハウのないことにも、あきらめることなく立ち向かい、乗り越えていってくれるに違いない」。
プロジェクトリーダーはそんな確信と期待を持って、メンバーの奮闘を細やかなマネジメントでサポートした。

依頼を受けた鉄道会社の担当者と打ち合わせをする中で明確になったのは、アプリにどのような機能を求めているかということ。
アプリ開発チームは、先方がリアルタイムな列車の位置情報だけでなく、列車の車両数など付加的な情報も表示したいという希望を聞き出し、一つひとつ実現可能か、そのために必要な技術や手法は何かを精査していった。「お客様のニーズを拾い上げる中でより鮮明になってきたのは、先行するアプリと同じレベルではダメで、後発だからこそ、その上を行くモノをつくらなければ意味が無いという意識が芽生えました」とリーダーは当時を振り返る。

こうした動きと平行して装置サイドのチームは、何を使い、どうやって、またどのように列車の情報を集めるかを実際に使用する装置などを検証し、各駅のホームにある行先案内表示器に情報を提供している案内中央装置を使用することに可能性を見出す。
「案内中央装置には、列車1本1本の行先・時刻・現在位置などの情報が集められているが、お客様が求める列車の遅延時間などを得るには、実際に列車が通過した時刻から計算したり、列車が停車していることを想定して時間を割り出すアルゴリズムの開発が必要など、いろいろな検討が必要でした。
そうしたことをできるだけ早く、的確にアプリ開発チームに伝え、より精度の高い開発ができるようにスピード感と密なるコミュニケーションを重視しました」。

こうしたチーム間の連携が全体の仕様決定を早め、プロジェクトは、次のステージへと歩を進めた。

Interview3

開発メンバー
それぞれが直面する困難を乗り越えて、
ついにアプリをリリース

様々なプロセスを経て、ようやくアプリ開発がスタート。Webをベースとした開発手法と、SVGという自分たちにとっては初めて扱う技術を採用した。
アプリ開発チームによると「開発にあたっての課題は数多くありました。AndroidとiOSのそれぞれのOSに対応したアプリをつくるのは、作業量もコストも2倍必要になります。またOSのバージョンの違いによっては機能しないというリスクも。そうした課題を解決する方法としてベースにWebの開発手法を使うことを決めました。
そして次にWeb上で画像や図式、情報などをなめらかかつ見た目にも美しく表示できるSVGという技術。これは私たちにとっては初めて扱うモノでした」。

この新技術採用というリスクがあるかもしれないチャレンジを、プロジェクトリーダーは、あえて口を挟まず、見守った。
「自分たちで考え、自分たちでベストだと思う答えを出したことですから、私は彼らに託しました。その方が本人たちもやる気がでるでしょうし、何かが起きても前向きに解決すると信じて・・・」。

この思いに応えるかのように、案内中央装置側の開発チームはアプリ開発チームと絶妙に歩調を合わせて、案内中央装置から情報を収集する仕組みや遅延時間計算アルゴリズムの開発、さらに情報を集約するサーバの構築、実際にデータ収集時にトラブルが起きないかを検証するシミュレーションなどに取り組んだ。

「何かトラブルが起きた場合、ユーザーはもちろん、鉄道会社にも多大な迷惑がかかりますから、細心の注意を払って、リスクの洗い出しを徹底して行い、解消方法もこれ以上ないというくらい検討しましたね」とメンバーも当時の苦労を振り返る。

そうして、2018年3月に列車走行位置アプリをリリース。

だが、開発はそこで終わりではなく、新たな機能の追加や精度向上への努力は続けられた。

そして2019年7月、新たなメンバーを迎えて、プロジェクトは次のフェーズへと進んでいくのだった・・・。

Interview4

新たな戦力となった新人の奮闘と
オールアイテックの智恵と力で
プロジェクトが完遂

「2019年にアイテック阪急阪神に入社し、新人研修を終えてすぐに配属されたのが今の部署でした。いきなり重要なプロジェクトにアサインされたことに驚きました」。そんな社会人1年目の新人が任されたのは、新たな鉄道会社から依頼を受けた列車走行位置アプリの顔とも言える表示画面のプログラム開発だった。

機能的な部分はリリース以降の運用と共に落ち着いている中で、画面表示については、「より見やすく、使いやすく」を追求し続ける必要があり、また鉄道会社それぞれの路線の特性や表示する情報の違いもあることから、改めて開発を行うという難しさがあった。

「いくらOSの影響を受けにくいWeb仕様での開発とはいえ、スマートフォンの機種によって画面のサイズや比率が違っていたり、時にはあまりに古い機種だと表示に不具合が出てしまいます。そうした観点から開発では、色々な機種・バージョンでの動作確認を行いながら、環境によって左右されないようなデザイン・処理になるよう工夫するなど、トライアンドエラーの連続でした」。
新人としては、あらゆることが初めて体験することであり、知識も経験も不足していると痛感することも多い中、常に前向きに開発に挑み続けた。

そんな苦しい時の心の支えになったのが、プロジェクトメンバー全員が共有していた「自分たちがつくったアプリで、もっとユーザーの生活を便利にしたい」という思い。自分の身近な人のためにがんばること、そのやりがいに支えられ、課せられたミッションをクリア。プロジェクトとしても2020年には無事アプリのリリースを成し遂げた。

—2021年現在も、利便性や機能の向上を目指したバージョンアップが行われている。
今回のプロジェクトを完遂できた理由は、メンバー全員の新たな技術への飽くなき挑戦と困難から逃げない勇気、メンバーの結束力によるところが大きい。もう一つ忘れてならないのは、彼らの他に鉄道関連部門をはじめ、他の事業の部門の智恵や協力も得て実現できたということ、すなわちオールアイテックで取り組むことができたのが成功の要因だということ。まさにアイテック阪急阪神のプロジェクトを支えているのは、メンバーだけでなく、全社員であり、一人ひとりがプロジェクトのキーパーソンだと言える。
そして、それが会社の強みでもあり、アイテック阪急阪神らしさでもある。

プロジェクトメンバーから
学生のみなさんへメッセージ

プロジェクトでは、地道にあきらめず改善し続けることも大切ですし、また新しい技術や未知の分野に挑戦しなければ、突破できないことも多々あります。
モノづくりの中では大変さやしんどさもありますが、その中で面白さを発見したり、自分自身の成長を実感したり、良いことも数多くあります。
アイテック阪急阪神には、みなさんが成長できるさまざまなプロジェクトが、今も次々と立ち上がり、活躍のフィールドは今後も増えていきます。若手もベテランも関係無くアイデアを発信して、新しいモノをつくっていくという活躍もできます。また、プロジェクトでは、様々な部署と連携する中で視野を広げていけるのも良いところです。
コロナ禍によって、今まさに世の中は大きな変革期にあると言えます。しかし逆にこうした状況だからこそ、私たちの鉄道分野をはじめ、他の分野も新たな発想と技術が求められていくことは間違いありません。ぜひアイテック阪急阪神で一緒に世の中を変えるような仕事にチャレンジしていきましょう! 近い将来仲間となるみなさんの入社を私たちも楽しみにしています。