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/ PROJECT03
子どもや高齢者が巻き込まれる事件が相次ぐなか、
防犯への関心はますます高まっており、地域の安全を守る体制づくりは社会全体で取り組むべき重要なテーマ。
特に近年は、進化を続けるテクノロジーの力を活かしたサービスが求められている。
鉄道事業を軸に良質な「まちづくり」を推進してきた阪急阪神ホールディングスグループのシステムインテグレーターである
アイテック阪急阪神は、「ITで社会に安心・便利を届ける」ことを使命とし、社会課題の解決に向けたソリューションを提供している。
そのひとつが「防犯管理システム」。
まちなかに設置した多数の防犯カメラを通じて地域の子どもや高齢者を見守る、自治体の運用に特化したサービスだ。
今回は、このシステムを伊丹市に導入し、街頭犯罪の減少に寄与した「伊丹市まちなか見守りプロジェクト」を紹介する。
物語の主役は、プロジェクトを牽引したリーダーと、その背中を追いながら奮闘した新人。
若手の成長こそが、プロジェクト成功のカギとなったのだ。
/ PROJECT MEMBER
都市創造事業本部
グロースプロモーション部
プロジェクトエンジニア
大槻 義人 YOSHITO OTSUKI
2006年入社
都市創造事業本部
グロースプロモーション部
プロジェクトエンジニア
中谷 彰皓 AKIHIRO NAKATANI
2015年入社
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/ EPISODE 01
伊丹市が防犯カメラ設置を決定
より強化した見守りシステムを提案し、
プロジェクトが動き出す
「伊丹市まちなか見守りプロジェクト」は、阪急阪神ホールディングスグループ傘下で情報・通信事業に携わるグループ会社4社で実現したソリューション。伊丹市が全国で初めて導入したサービスだ。
発端となったのは、2014年に神戸市で発生した小学生が犯罪の被害に遭うという衝撃的な事件。同じ兵庫県に属する伊丹市の住民にも大きなショックを与えた。
地域に広がる不安を敏感に察知した伊丹市長は、地域の子どもたちを守る方法を模索。事件の解決に防犯カメラ映像が大きな役割を果たしたことから、行政主体の見守り事業を自ら提案したという。
こうして「市内1000カ所への防犯カメラ設置」が決定。業務委託先を選定するプロポーザル審査の参加企業として、アイテック阪急阪神にも声がかかった。
「提案に至るまでのプロセスが、もっとも大変だった」と振り返るのは、プロジェクトリーダーの大槻である。「私たちは、まちなかに防犯カメラを設置するだけでは十分ではないと考えました。そこで、カメラとビーコンの連携に着目。ビーコンタグを持ったお子さまがカメラ前を通過すると保護者などのスマートフォンに通知が届く仕組みにしました」。 阪急阪神ホールディングスグループには、ICタグによる登下校通知サービス「登下校ミマモルメ」など見守り分野での実績を持つ企業があり、グループ内での連携によって実現できると判断したのである。
前述の通り、本プロジェクトには阪急阪神ホールディングスグループの4社が関わっている。「グループ総出で提案しようと決め、半年の時間をかけて構築しました。技術力の高いグループ各社にご協力いただけたのは心強かったのですが、そのぶんステークホルダーの数が増えます。それぞれの考えや想いをまとめ、最適なかたちに落とし込んでいくのは困難を極めました」と大槻は当時を振り返るが、その努力と苦労は報われる。 提案内容が評価され、伊丹市はアイテック阪急阪神を業務委託先として選定。「伊丹市まちなか見守りプロジェクト」は、いよいよ動き出した。
NEXT2
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/ EPISODE 02
B to Gの業務プロセスに戸惑いつつ
チームを束ね、前例のない取り組みを前進させる日々
伊丹市から寄せられた高い評価に応えるべく、プロジェクトリーダーの大槻は20名を超えるメンバーからなるチームを結成した。
大所帯となったチームをまとめ、スムーズに推進するためには、リーダーのマネジメント力にかかっていく。
「自治体やグループ会社の間に立ち、要件の取りまとめや各種調整、機器設備に伴う施工管理など、あらゆることに関わって調整しました」と語る大槻のリーダーシップによってチームは結束し、プロジェクトは順調に前進していった。
とはいえ、プロジェクトの遂行に困難はつきものである。進行の中で浮かび上がった問題のひとつが、「電柱への設置」だった。「このシステムでは、防犯カメラと送受信機能を備えた機器を電柱に取りつける必要があります。しかし、私たちの取り組みは全国初。これまでに同様の機器を電柱に設置した前例がなく、電力会社からは難色を示されたのです」。
大槻は頭を抱えたが、プロジェクトリーダーとして引き下がるわけにはいかない。自社単独での説得が難しいと判断し、伊丹市および阪急阪神ホールディングスへ協力を依頼。力を合わせて丁寧かつ粘り強い交渉を重ねていった結果、設置が認められることとなったのだ。
また、自治体特有の仕事の進め方にも当惑したという。「民間と行政では、意思決定のプロセスがまったく異なりました。特に予算に関する事項は厳格で、すべてを議会にかけて承認を得なければなりません。私はそれまでB to B案件を中心に担当しており、B to Gの業務は初経験。議会の準備を任されたときは、戸惑いました」。議会提出用の資料作成では「トライ&エラーというより、トライ&エラー、エラー、エラーでしたね」と笑う大槻だが、どんなに苦労しても立ち止まることはなかった。
「私たちは、お客様と決めた納期を守らなければならない。それに、このプロジェクトは“伊丹市に暮らす方々の安全・安心を守る”ためのもの。絶対にやり遂げるという信念を持ち、突き進んでいました。それができたのも支えてくれるプロジェクトメンバーがいたからです」と感謝を述べる大槻。実は、このプロジェクトには大槻の片腕とも言えるメンバーがいた。
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/ EPISODE 03
リーダーが別部署へ異動
プロジェクトの拡大を任されたのは、
入社2年目の若手社員
プロジェクトメンバーとして参画した当初の中谷は、入社1年目の新入社員。プロジェクトリーダーを務めていた大槻がOJT担当となり、システムの設計や導入の基礎を指導した、いわば“愛弟子”である。
学生時代に情報工学を学んだ中谷はITの基本的な知識を備えており、システムに関することは概ね理解していたという。しかし、当プロジェクトでは防犯カメラやビーコンなどの機器に関する知識、それらを電柱に設置するための電気工事法に関する理解も求められた。当初は「とんでもないところにアサインされた」と焦り、「社内で注目されているビッグプロジェクトの中で、自分は何ができるのか」と大きな不安を抱えていたという。
そんな中谷に、大槻はシステム構築や機器設定、動作確認といった“実際に手を動かす業務”を担当させる。まずは現場で体を動かしながら仕事に慣れさせ、段階的にプロジェクト全体を理解させていく。指導役であった大槻の配慮があったのかもしれない。 その大槻がチームを離れることになった。
2015年に開発が始動した「伊丹市まちなか見守りプロジェクト」は、翌2016年1月に防犯カメラとビーコン受信機を内蔵した機器を伊丹市内の1000カ所に設置。同年3月からは運用を開始している。 それを見届けたのち、大槻は社内の別部署へ異動。プロジェクトの指揮を引き継いだのは、入社2年目となった中谷であった。
「大槻さんがプロジェクトを離れた後は、私が伊丹市やグループ会社との調整役を担い、現場での指揮も取るようになりました」。実質的にプロジェクトを担う立場となった中谷は、大きな重圧を感じつつも、業務の幅が広がることに確かな手応えを感じていた。「対象エリアを拡大していた時期で、機器の設置を進めていく作業は想像以上に面白かったですね。機器の設置場所を決めるため、ひたすら上を向いて歩いて設置可能な電柱を探していました。その習慣が身についてしまったのか、10年近く経った今でも、電柱を見かけるとつい番号を確認してしまいます」と笑う。
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/ EPISODE 04
地方自治体から、国家プロジェクトへ
全国初の見守りシステムは、
今も地域の人々の安心・安全を支えている
そして大阪・関西万博でも
2016年からプロジェクトリーダーという立場で経験を積んできた中谷は、着実に成長を遂げ、堂々とプロジェクトを推進する存在へと変化していった。中谷は、周囲の理解にも感謝する。「伊丹市の方々は、若手である私の意見にも真剣に耳を傾けてくださいました。根拠を明確に示し、説得力のある提案をすれば受け入れてもらえる。その経験が自信につながりました」。
大槻から中谷へと引き継がれた「伊丹市まちなか見守りプロジェクト」は、現在も稼働を続けており、地域の子どもや高齢者など伊丹市に暮らす人々の安全・安心を支えている。2021年1月には、既存の固定受信機に加えて当社とグループ会社が共同開発した移動受信アプリが導入され、さらに強固な見守り体制が整えられた。
その効果は数値にも現れており、「防犯カメラ・システムの導入により、伊丹市内の犯罪認知件数は大幅に減りました。導入前の2015年と比較すると、2022年には66.1%の減少が確認されています」と大槻は胸を張る。
運用効果が認められた本システムは、伊丹市以外の自治体にも採用されていく。尼崎市、芦屋市、西宮市、加古川市、姫路市など、兵庫県内の複数の市に導入され、神戸市では2017年度と2020年度で2000台もの防犯カメラを設置。市民から「神戸市カメラ」として親しまれている。
さらに、2025年4月に開幕した「大阪・関西万博」でも本プロジェクトで培ったコンポーネントをベースとしたシステムが導入されている。 複数の駐車場が設置されている万博では、広大な敷地の安全性を確保するために防犯カメラによる一元管理が求められていた。その話を耳にした中谷は、伊丹市などでの経験をもとにシステムを設計し、大槻に相談。大槻が仕組みを整えて提案の精度を高めていった。「プロポーザル方式での選定でしたが、私たちには伊丹市などで実施してきた見守りプロジェクトの実績がありました。それを信頼していただき、採用が決まったときは本当に嬉しかったですね」と大槻は語っている。
地方自治体から国家プロジェクトへ──。
阪急阪神ホールディングスグループの技術力と、アイテック阪急阪神の師弟コンビの奮闘によって実現した全国初の見守りシステムは、活躍のフィールドを拡大しながら、今もなお地域の人々の安全と安心を支え続けている。
GOAL
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